金の斧

2014.10.18.Sat.08:41
「しまった! うっかり池に斧を!……わっ」

「あなたが落としたのは、この金の斧ですかそれともこの銀の斧ですか」

「……あんた、池の中にいたんだよな」

「そうですが」

「斧が落ちたの、わかったんだよな」

「いかにも」

「で、金でも銀でもなかったっていうことに気付かなかったわけか?」

「え。いや、あの」

「はい、この指は何本でちゅかー?」

「さ、三本」

「見えてまちゅねー」

「うっ」

「まあいいや。俺の落としたのは金でも銀でもなく、鉄の斧ですよ」

「あ、あなたは、ええと正直者です。ご褒美にこの」

「ちょい待ち。『正直者』ってことは、やっぱり最初からわかってたんだな」

「えー…蒸し返すんだ…」

「んで、こいつ欲深いかどうか試しちゃおー、なんて思い上がってたわけだ」

「そうじゃないです」

「うっかり俺が『金の斧です』とでも答えたら、罰とやらで拾得物横領しようと思ったわけね」

「違い…ます…うっ」

「それってさ、楽しいのか?」

「うっ。ぐすっ」

「楽しいのかって訊いてんの」

「あたしそんな、そんなつもりじゃ……ぐす。ぐすっ……」


「…やがてその涙は池から川に、川から海になって、だからこそ海の水はあんなにしょっぱいんだよ。めでたしめでたし。はいおやすみ」

「パパきらい」

「なんで?」
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